りんご高密植栽培試験事業

りんご高密植栽培とは

りんご高密植栽培は、「トールスピンドルシステム」とも呼ばれ、イタリア・南チロル地方を中心に米国や韓国でも取り組まれており、単位面積当たりの植栽本数を今まで以上に多くして、より早期多収と高収量を目指す栽培方法をいいます。
また、定植後の作業の省力化、管理の低コストも魅力とされています。

弘果総研試験園地開設

弘果総合研究開発では、りんご高密植栽培を県内に広めていくことを目的に、生産者に対し初期投資費用の一部補助を行い、共同方式により試験園地を開設し、栽培研究とそのPRを行っています。

【試験園地の概要】

開設時期 2019年(平成31年)4月定植 2021年(令和3年)4月定植
場  所 3地区
(青森市浪岡地区、藤崎町藤崎地区、弘前市三和地区)
6地区
(弘前市下湯口地区・緑ケ丘地区・独狐地区、藤崎町林崎地区・西村井地区、板柳町灰沼地区)
数  量 715本/20a 996本/30a
品  種 宮美ふじ 宮美ふじ

弘果総研りんご高密植栽培研究会発足

 2021年(R3)7月に、試験園地の生産者9名と弘果総研、原田種苗が構成メンバーとなり、「弘果総研りんご高密植栽培研究会」(田中一幸会長)が発足しました。
 本会は、りんご高密植栽培の栽培技術向上、普及促進、関係者の交流を図ることを目的に、研修会の開催、生育調査、肥大調査、栽培試験の情報交換会などを行っています。

【県民対話集会「#あおばな」開催】

 2024年6月22日青森県主催の県民対話集会「#あおばな」が、青森市浪岡の試験園地で開催され、宮下宗一郎知事と研究会メンバーが車座となってトークが繰り広げられました

 ※「#あおばな」の開催状況はこちらのリンクから

試験栽培の状況

試験栽培の状況

●概況 
 3園地とも樹勢は順調に生育しており、うち2園地は定植2年目で初収穫、残りの1園地でも定植3年目で初収穫が行われました。

●定植5年目 2023年産(R5)
 樹勢(10月調査、3園地平均)
  主幹長   387cm
  幹 周   12.6 cm
  幹直径   4.0 cm
 果実肥大調査
  全体的に品質、食味とも良好
  収量平均 282(5.6t)/10a換算
  果実調査平均値 重量 344 g   
          硬度 14.3 1b
          糖度 13.7 %
  日焼け(聞き取り) ほとんどなし

●定植4年目 2022年産(R4)
 樹勢(11月調査、3園地平均)
  主幹長   387cm
  幹 周   11.1 cm
  幹直径   3.7 cm
 果実肥大調査
  全体的に品質、食味とも良好
  収量平均 226(4.5t)/10a換算
  果実調査平均値 重量 357 g   
          硬度 13.8 1b
          糖度 13.5 %
  つる割れ平均(聞き取り) 6.7% 
  日焼け(聞き取り) ほとんどなし

●定植3年目 2021年産(R3)
 樹勢(10月調査、3園地平均)
  主幹長   351cm
  幹 周   9.6 cm
  幹直径   3.0 cm
 果実肥大調査
  扁平果も見られたが、全体的に品質、食味とも良好
  収量平均 90箱(1.8t)/10a換算
  果実調査平均値 重量 311 g   
          硬度 16.9 1b
          糖度 15.2 %

●概況
 6園地とも樹勢は順調に生育しており、全ての園地で定植2年目で初収穫が行われました。

●定植3年目 2023年産(R5)
 樹勢(10月調査、6園地平均)
  主幹長   335cm
  幹 周   8.8 cm
  幹直径   2.8 cm
 果実肥大状況
  全体的にやや小玉傾向、食味は良好
  収量平均 80箱(1.6t)/10a換算
  果実調査平均値 重量 342 g
          硬度 15.3 1b
          糖度 14.8 %
  日焼け(聞き取り)ほとんどなし

●定植2年目 2022年産(R4)
 樹勢(11月調査、6園地平均)
  主幹長   283cm
  幹 周   7.2 cm
  幹直径   2.3 cm
 果実肥大状況
  全体的に品質、食味とも良好
  収量平均 37箱(0.8t)/10a換算
  果実調査平均値 重量 342 g   
          硬度 15.1 1b
          糖度 14.8 %
  つる割れ平均(聞き取り) 12.2% 
  日焼け(聞き取り)ほとんどなし

●定植1年目 2021年産(R3)
 樹勢(10月調査、6園地平均)
  主幹長   211cm
  幹 周   5.4 cm
  幹直径   1.7 cm
 果実肥大調査
  1年目のため「収穫なし」

生産者の声

【2023年度産の主な個別の感想】
 ・丸葉、わい化に比べて日焼け果、鳥害が少なかった。
 ・ネズミ被害があった。
 ・葉とりや除草剤散布のタイミングが難しい。

【2022年度産の栽培感想】
 全体的に、9名の生産者の多くが「栽培管理がしやすい」、「作業効率が良い」、「栽培コストが安い」、「品質に満足」といった感想を述べている。

【個別の主な感想】
 ・ツル割れを2~4%に抑えることができた。
 ・日焼けがほとんどなかった。
 ・わい化、丸葉と比べて草刈りが楽だった。
 ・日当たりが良いため葉取りのタイミングが難しい。
 ・わい化、丸葉と比べて玉伸びが良かったが、その分つる割れも多かった。

りんご高密植栽培に関する論文

公益財団法人青森学術文化振興財団が主催する「令和3年度懸賞論文事業」に、弊社、経営企画室の榮田研究員が応募した論文「りんご高密植栽培の確立で移住者を農業へ」が入賞し、同財団のホームページに公開されました。
【財団ホームページリンク:懸賞論文事業 – 公益財団法人青森学術文化振興財団 (sakura.ne.jp)